僕は、小さな頃から極度の人見知りで、親戚が集まる法事などは特に嫌だった。人が来ると物陰に隠れてしまう。そんな子供だった。人の前に立つもの非常に緊張してしまう、極度のあがり症。他人と話すのも緊張してしまい、なるべくなら人と話さず一人で過ごす方が楽だった。そんな僕をガラッと変えたのが、「アルコール」であった。
「飲酒は、二十歳になってから」の罠。
大人になると、飲んでいいのが【お酒】。
「ようやく、二十歳になったか!これで、堂々と、酒がのめるな!」と他の大人に言われて、これで、一人前の大人の仲間入りだと思いました。
初めに飲んだのが、「ビール」。なんで苦い飲み物だと思いました。だけど、他の人を見ると、なんと美味しそうにのむことか!
テレビをつけると、またこれがうまそうに飲むイケメン芸能人の姿が毎日のように流れています。
「ぷっはー!うまい!!」と豪快にジョッキを叩きつけるイケメン俳優や、美人女優達!
これが、大変な仕事を一日やりとげたご褒美なんだなと洗脳されていました。子供の頃から、周りの大人は、みんな「お酒」を飲んでる。
テレビでも、これは「ご褒美」だ、「至福の瞬間」だと持てはやされているから、飲むのが「当たり前」、飲めない方がおかしい…なんで、こんなおいしいものを飲まなないんだ?
「人生の半分を損しているよ」なんて言われます。
僕もご多分に漏れず、ビールから始まり、焼酎、ワイン、ウイスキーと一通りの酒を飲んできました。

はじめは機会飲酒から。
始めは、なにかの集まりで「とりあえずビール」という決まり文句から始まりました。
毎回、苦いな~って思っていたんですが、徐々に舌が慣れてきて、不思議なことにおいしく感じてきた瞬間がありました。
「あれ?うまいな…」これが、危険信号だったのにも気づかずに…
すると、不思議なことに、なんだか楽しくなってきた。ワイワイしている雰囲気で、どんどん飲んでいると、あれほど人見知りだった僕が、人と話してみようかなという気になってくる。
相手も飲んでるし、お互いが飲む際には、「乾杯」って言って互いのグラスを打ち付け合う。
そして、相手も飲んでるのを確認しながら、自分も飲む。これは、危険な飲み物じゃないよとお互いにい確認し合っているかのように。

僕が、カラオケデビュー?!
人前に出るのも嫌なのに、自分が人前で歌を唄うなんて、もってのほかだ!と思っていたのに、時は空前のカラオケブームの時代!
街には、所狭しとカラオケ店が乱立していました。
当然、居酒屋の次に行くのは「カラオケ屋さん」です。
まあ、別に歌わなくても、飲んでいればいいわけですから。飲んでいたら、やっぱり順番が回ってきて、なにか唄わないといけない雰囲気に…
仕方なく、ページをめくり唄いやすそうな曲を選び、歌うことに。その間に、緊張をほぐそうと、アルコールを流しまくりました。
程よく酔っぱらってきて、自分の番に。
唄ったのは、ユニコーンの「大迷惑」だいぶテンポが速く、まくしたてるように唄う曲です。
僕は、アルコールの力を借り、文字通り「熱唱」しました!
すると、周りが一瞬きょとんとし、盛大な拍手が!!「おーすごい!いいね!また唄ってよ!」
と、絶賛を受けました。これには、僕自身も驚いて正直、かなり嬉しかったのを覚えています。
「アルコールの力ってすごい…」僕はこう心の底から思いました。

飲み会では、面白がられる。
僕は、アルコールの味と、高揚感を覚え飲み会の度にたくさんのアルコールを飲み、自分から盛り上げ役をするようになりました。
本来の内気な少年はどこへやら…まるで別人のような自分がアルコールの力を借りて、豹変し場を盛り上げている。
「みやっちさんは、飲むと面白いよね!」なんて言われて。

その時は、「飲まないと大人しいよね」という裏にある意味なんて気づかずに…
もう、勢いだけ。その場でたくさん飲んでは、吐くの繰り返しで、徐々にアルコールに強くなっていきました。
世間では、アルコールが飲めると、「強いんだね~」、「たくさん飲めてカッコいい!」なんて言われて持てはやされます。
どうだ、俺は強いんだぞ!なんて心の中で思って。
周りも、社会人たるもの、酒の一つも飲めなくてどうする?社会人は、酒が飲めて一人前。酒が飲めない奴なんて、信用できないとまで言われていました。
機会飲酒から、習慣飲酒に。
飲み会で、お酒の味を覚えてから家でも飲むようになりました。
仕事から帰ってきたら、シャワーを浴びて「缶ビール」をプシュッとやる!

これが、日常の楽しみの一つになっていきました。
すると、のどがカッと熱くなって、胃のあたりにポッと火がつく感じがしました。
これが、気持ち良くて、最初の一杯がうまい!
よく言う「この一杯のために生きてるな~」なんて本気で思っていました。
ずっとビールだと経済的に厳しいから、だんだん安い焼酎に。
2Ⅼとか、4Ⅼいくらの大きなペットボトルの焼酎を買うようになりました。
始めは、缶ビールを飲んでその後は焼酎っていうルーティンが出来上がりました。
二日酔いで、もうつらいと思う。
飲み会の次の日は、決まって二日酔いです。
頭がガンガンして、気持ち悪い。のどは痛いし、体は思い。かろうじて水を探してぐびぐび流し込む。
ようやく起きてこられるのは、お昼過ぎ。重たい体を引きずりながら、お気に入りのラーメン屋に。
疲れた体に、味の濃いラーメンがうまいこと!十分な塩分を補給して、体調が徐々に回復してきて、
夕方になるころには、あんなにつらく、「もう酒は当分いいや…」と思っていたのに、
また、飲みたくなってる。居酒屋の前にある赤提灯が僕を呼んでいる…とさえ思いました。
で、やっぱりまた、缶ビールを開けてる(笑)プシュッ!
二日良いで辛かったのに、また飲んでいる。そんな日常を繰り返していると、いつしかそれが当たり前に。
もともと、真面目な性格で、一度始めたら途中ではやめない性格からその生活が約20年続きました。
完全なアルコール依存症の完成。
アルコール依存症の怖いところは、自覚がないこと。
自分が「依存症」だなんて、これっぽっちも思ってない。周りもみんな飲んでるし、自分も楽しく飲んでる。
生きている中で、これしか楽しみがないって本気で思っていました。
アルコール依存症なんて、意思の弱いやつがなるんだと、自分は十分コントロールできている。と思っていました。
まさに、「否認の病」。自分だけは違うと思って、知らず知らずのうちに、体や、脳にダメージが蓄積していきました。
また、自分だけにとどまらず、徐々に周りの人にも悪い影響をもたらすことになっていきました。
他者から指摘されるようになる。
一番身近な家族へ負担をかけ始めていることにも、気づかないでいると、遂に他者から指摘を受けるようになっていきました。
「そろそろ、飲む量を抑えた方がいいんじゃない?」「ほどほどにしたら?」「体壊すよ?」などなど…
こう言われると、言われている方はより頑なになり、「自分はコントロールできている」
「大人なんだから、他人にどうこう言われたくない」「唯一の楽しみを奪うのか」と怒りを覚えてきます。
絶対に、酒をやめる気なんてありません。さらに強く、酒だけは止めないぞと強く心に決めた程です。
僕は、若い頃にタバコも吸っていて(当時は、右も左もみんな吸っていた時代でした)、第一子が生まれたことをきっかけに禁煙しました。
これは、割と上手く行きました。禁煙もやったんだから、その上、酒までやめろなんて…
僕は、一体なんのために仕事をしているのか?と悶々としたのを覚えています。
断酒のきっかけ
だいぶ家庭が壊れかけてきた頃、妻が体調を崩し入院することに…。

これを機に、ついに直接上司2名から切り出されました。
「もう、酒やめな」「うっ!」 だいぶ衝撃的な指示でした。
「節酒じゃダメですか?」 上司「ダメだ」

オワタ… ガクガクブルブル…
妻が入院というだいぶ日常から離れた状態となり、上司から直接言われても、なお否定したかったのも事実ですが、僕は言いました。
「わかりました…酒やめます」
断酒生活の始まり
妻が入院したのをきっかけに断酒を開始しました。一日目はどうにかなると思ったんですが、継続していくには、どうすればいいかなと思い、ネットで調べてみると、
アレン・カー著の「断酒セラピー」がいいという記事が多くみられたので、自分もさっそく買ってみることに。
読んでみると、目からうろこのことがたくさん書いてありました。

特に、「食虫植物とハエ」の話が印象に残りました。
ハエが、ウツボカズラの放つ甘い蜜に吸い寄せられ、滑り坂のどんどん奥へ落ちていく。
底には、半分体が溶けた仲間の死体がたくさん見える。
「だけど、僕だけはああならない。僕はまだコントロールを失っていないのだから、出たくなったら飛んで出ればいい」
そして、酒量を制限してもアルコールの魅力は減りません。逆に、お酒が人生全体を支配するのです。
ハエも、アルコール依存者も、逃げようともがけばもがくほど、さらに囚われの身になってしまします。
このようなことがたくさん書いてあり、読めば読むほど自分に当てはまることがいっぱいありました。
自分では、酒をコントロールできていたつもりでも、じつは全くコントロールなんてできていない。
酒を飲み始めた頃から、実は酒にコントロールされていたという事に気づかされました。
よって、もう一滴でも飲んだら、また元の状態に戻るのだと強く心に刻みました。

断酒するために始めたこと
- 散歩をする
- 規則正しい生活リズムをつくる
- 本を読む、YouTubeで勉強する
1.散歩をする
酒を飲まないと、眠れないんじゃないかと不安だったので、とりあえず体を動かして疲れれば寝付けるだろうと思い、その日から散歩をすることにしました。
結果、体を動かす習慣ができ睡眠の質向上につながった!
2.規則正しい生活リズムをつくる
まず、早寝早起きがいいと思い、夜9時にふとんに入ることにしました。初めはやはり寝付けなかったので、睡眠薬を使いました。
眠剤を飲んだという安心感からか割とすぐに眠ることができました。そして、徐々に眠剤も飲まないようにし、眠剤なしでも寝付けるようになりました。
3.本を読む、YouTubeで勉強する。
本は、引き続きアレン・カーさんの「断酒セラピー」を熟読し、YouTubeでは、禁酒断酒実現プロデューサーの小太郎さんのYouTubeが大変勉強になりましたので、毎日見ていました。
自分に刷り込むように、毎日動画をみて、潜在意識にインストールしていきました。
このようにして、まずは、1日、3日、1週間、2週間、3週間、1か月と断酒の期間を延ばしていきました。
断酒後の体と脳への影響
断酒1か月位過ぎると、体と頭に変化がみられてきました。
まず、朝がすっきりしている!まったくだるくない。さわやかな気分で起きることができました。

すべて、リセットされているような感じでした。
気持ち悪さもなく、頭痛もなく、口の中の不快感もなく、体が軽い!
気分もいい。なんだか朝からやる気が湧いてきました。

頭もすっきりして、クリアな感じがする。一時期だいぶ記憶能力が落ちてきたと感じていたものが、記憶力もよくなってきました。

このように、いままでの自分が嘘のように、いろいろな面で改善していきました。
まとめ.
社会人になったら、当然のように飲むものだといつの間にか刷り込まれていた過去の自分に、言いたいです。
「酒はやめろ」と。
楽しくなっているのは、脳の錯覚で、勘違いだと、今なら言えます。人間は、本来酒なんてなくても楽しむことができるように神様が作ってくれています。
酒は人間が作り出したもの。つらい現実から目を背けさせるために、作り出した薬物です。
知らず知らずのうちにアルコールの罠にはまり、抜け出せなくなってしまう。
そう考えると、自分は幸運だった。気づけたうえに、断酒できたのだから。
今、断酒して4年が経ちます。すっかり酒を飲みたくなくなりました。しかし、油断は禁物。
今でも、決して一滴でも飲まないように心がけています。
人生は、何かにコントロールされるんじゃなく、自分でコントロールするものだと思います。
酒をやめてから人生が、好転しています。いいことが次々と起こっています。
自分の人生を生きれるのは「自分だけ」。
一度しかない人生を大いに楽しむために、今この瞬間を大事にして日々、「感謝」を忘れずに生きていきたいと思います。
最後まで読んで頂き、大変うれしく思います。ありがとうございました。
ではでは!




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