僕は、作業療法士として、22年の勤務経験があります。
そんな僕だから、伝えられることがあると思い、筆をとりました。
皆さん(OTの学生さん)はどんなイメージを持って作業療法士を目指したのでしょうか?
まずは、国家試験に合格してOTにならなければいけませんが、なる前に挫折しない為にも伝えたいことがあります。
人の数だけ作業療法士像が存在する
あなたが、目指す分野によって作業療法士の持ち味が変わってくると思いますが、一概にOTと言っても、多種多様なOT像が存在します。
実習などを通じて、色々な分野に行き勉強してくると思いますが、ある程度あなたの頭の中にこうなりたいというイメージをもつことが大切です。
身体障害領域で、身体に対するリハビリがしたいのか、精神科領域で、精神に対するリハビリがしたいのか、小児科領域で、子供に対するリハビリがしたのかで大きく変わってきます。
一番初めに見る身近な作業療法士さんは、学校の先生だと思いますが、あくまでその人の作業療法士像なので、先生と同じにならなくても良いのです。
あなたのなりたい作業療法士になれば良いのです。
どんな作業療法士が良いのか?
私たちのリハビリの対象は、主に病気やケガなどで健康を害した人です。
ですから、基本的に「元気がない」状態の人が多いです。
想像してみれば、すぐわかると思いますが、あなたが「頭が痛かったり」「歯が痛かったり」「体がだるかったり」「おなかが痛かったり」したらどうですか?
なんにもない時のように、元気にいられますか?
明るく、笑顔にはなれないと思います。そんな方々に接していく仕事ですから、こちら側の状態が重要なのです。
対象者は、「マイナス」です。マイナスの状態の人にあなたも「マイナス」状態であったらどうでしょう?
相手は、余計にマイナス状態になり、落ち込んでいきます。
では、「明るく、元気いっぱい」で接すれば良いのかというと、そうでもない。
ここが難しい所です。
このさじ加減がOTの最大の経験値の差がでる所でもあります。
初見から、信頼関係を築き、日々のリハビリ等を通じて患者さんと接していくなかで徐々にその人のちょっとした機微を感じ、その日に合わせた対応ができるようになっていくことが目標になります。
だから、OTには経験が必要だと言える
そのような対応は、一朝一夕にはできないと思います。
その人が今まで生きてきた背景や性格、家族構成やその人のライフイベント。
現在の状況や未来の想像まで把握していないと、今その人に合った対応を取るのは難しいです。
また、自分自身が経験していないことは、どうしてもリアリティーに欠けるために説得力に差がでます。
独身の人に、家庭の話とかはあまり具体的には想像できないと思います。
でも、これはまさに経験なのでしょうがない部分でもあります。
ですから、学生さんはその「経験」の部分が極端にないのだから「できなくても当然」なのです。
別に、できなく当然だと開き直れと言っているわけではありません。
できないからと言って、過剰に「落ち込むな」と言いたいのです。
これから「実習」などへ行く学生に向けて
学生が神経をすり減らし、一番嫌な事が、「実習」だと思います。
自分がそうだったからよくわかります。
僕も初めて実習にいく、前日の夜は緊張して眠れませんでした。
看護の学生と違ってOTの学生は、実習地へ「一人」で行きます。
知らない土地の実習地に単身で乗り込むわけですから、相当な緊張とプレッシャーを感じます。
そのようなガチガチの状態ですので、いつものパフォーマンスを発揮するなんて到底、無理だと思います。
学校で習ってきた知識もどこかへ飛んで行ってしまうのもわかります。
自分が学生だった頃は、まだまだ「スパルタ」教育が大手を振って道のど真ん中を歩いていた時代ですから、厳しい事が当たり前でした。
基本的に、「職人肌」の先輩が多かったので、「技術は目で盗むもの」という大工さんも腰を抜かす程の世界でした。

実習中は基本的に「徹夜」が当たり前で、デイリーノートやらケースノートやら、レポート等が毎日あるわけで、それらに追われ寝る暇がありませんでした。
毎日、眠い目をこすりながら、体調不良を押して実習へ行ってました。
夕方ごろに病院の勤務時間が終了すると、今度は実習指導者の方と「飲み」に行く事も日常茶飯事でした。
飲んでから帰宅すると、すでに11時頃です。ここから必要なレポート等を書き始めるので、当然「徹夜」コースになります。
今考えると、そんな生活がよくできたなと我ながら自分を褒めるんですが(笑)、まだ若かったのと、そうゆうもんだと自分自身が思い込んでいたので、できたのかと思います。
周りの同級生達もほぼ同じような状況だったので、割と普通に受け入れていました。
今の学生の皆さん!今は違いますよ!
上記の話は、あくまで自分の頃の話で、現在はだいぶ改善されていますので、安心してください。
何年か前に、新に実習を受ける病院や施設の指導者に対し、新たな実習指導者講習が行われ、その講習を受けないと実習指導ができないという様に変更がありました。
いわゆる、「パワハラ」や「セクハラ」などの問題があり、それを改善する為に全国的に改善が行われました。
僕も講習を受けてきたんですが、丸2日間の講習で、1日中座学やディスカッション等を行うハードなものでした。
その講習会により、だいぶ実習自体も「学生に合わせた実習」に変更されたのですが、その内実はその病院の中でしか知る由はありません。
だがら、今でも「当たるも八卦当たらぬも八卦」的な要素は存在しています。
良い実習地に当たるか、悪い実習地に当たるかはその人の「運」次第なところもあるので、こればっかりは自分ではどうしようもないのも事実です。
学生が実習を乗り越えていく為には?
作業療法士になる為には、「実習」は避けては通れません。
僕自身は、自分の経験から学生主体の実習を行うように心がけているのですが、場所によっては今でもキツイ所はあるようです。
そんな中、キツイ実習を「どう乗り越えいけば良いかというアドバイス」をしたいと思います。
まず、「キー」になるのは、やはり実習指導者との相性であると思います。
僕自身がまず、考えたのは実習指導者がどうゆうタイプの人間なのかを把握することでした。
性格傾向をキャッチして、自分がその人に合わせるようにしました。
100%合わせることはできませんから、4割から5割位までその指導者が好むような自分を作るのです。
「自分から相手に寄せていく」感じですかね。
まず、これが基本になります。次は、「話を聞く姿勢」をしっかりすること。
指導者の話に対し、しっかり「相槌」を打ち「うなずき」「目線を合す」という事を心がけましょう。
実習を乗り越えていくために、指導者に気に入られる事も重要なファクターです。
自分の体調管理など、自己管理も大切!
実習中は、ただでさえいつもと違う環境で、慣れない場所・見知らぬ人という過酷な条件のもと実習をしています。
よって、常に緊張状態にさらされ、精神状態と身体状態の乖離が起こっています。
睡眠不足、栄養の偏りがおき、体調管理が不十分な学生さんが多く見られます。
今は、実習指導者側にも学生に対し十分な睡眠と栄養補給をするようにと指導がされていますが、学生本人も意識して取るようにしてください。
特に「睡眠」は必要不可欠です。

※体調管理ができない場合は、実習指導者や、学校の先生に「相談」しましょう!
実習を乗り越えて、有資格者になったら…
実習を乗り越え、国家試験に晴れて合格したら、いよいよ作業療法士としてデビューとなるわけです。
まず、一年目では「理想と現実のギャップ」が押し寄せてきます。
「患者様の為になれる作業療法士になろう!」と意気込んできたあなたですが、理想と現実のギャップにいきなり心が折れそうになるかと思います。
初めは、覚えることが多く目まぐるしく日常が過ぎていくと思いますが、1か月も過ぎるころになると、ふと「あれ?これが自分のやりたかったことだっけ?」と自問自答することがあるかと思います。
こんな時に、僕は言いたいです。
「大丈夫、まだ始まってもいないから!」と。
あなたは、まだ駆けだしたばかりです。1か月やそこらではまだまだ入口にも到着していません。
幸いなことに、作業療法は「奥が深い」です。
22年継続してきた僕でも「日々、新しいことの発見」があります。
だから、焦らなくていい。
地道に一歩、一歩積み上げて行ってください。
近道はありません。
ひたすら「歩む」だけです。
そうすれば、いつか光が差しこんでくるに違いありません。
あなたなら、必ずできる。
あきらめなければ、必ず道は開けます。そう信じて、僕も日々生きています。
まとめ.
自分の仕事は作業療法士でよかったのかな?と疑問を持つ瞬間はあると思います。
理不尽な事を言われることもあるし、上司から無理難題を突き付けられることもあると思います。
こんな事をやるためにOTになったんじゃないと思うこともあるでしょう。
しかし、人生に無駄なことはひとつもありません。
すべて何かしらの役に立つのです。
役に立てるも、ドブに捨てるもあなた次第です。
小さな経験も、大きな経験もすべからくあなたの血となり肉となります。
経験を積むことで、新たな引き出しができ、新しい対応などができるようになってきます。
その時に、自分自身に驚くことでしょう。
経験は裏切りません。日々の何気ない活動を大切にして作業活動を行っていってください。
あなたの成長が、患者様の役に立ち社会全体の役に立ち、この世界全体の役に立つことができると思います。
我々は一つです。
自分にできることを精一杯行うことが今日できる事で最も重要なことです。
最後まで、読んで頂き大変うれしく思います。ありがとうございました。
ではでは!

